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  1. 化学・バイオの特許「あるある」ブログ
 

化学・バイオの特許「あるある」ブログ

2020/02/29
学生向けに、特許明細書の読み方について講義をすることがあります。

そんなとき、「化学系の明細書は、実施例にレシピ集が書いてあると考えるとよいですよ」と伝えています。

引き続き、サントリーストロングゼロの特許明細書から例をひろってみます。

 

(サントリーストロングゼロ 特許情報)

特許第4892348号

発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」

【実施例1】
<レモン凍結粉砕浸漬酒の製造>

簡単に言うと、レモン酒のつくりかた、ですね。

中身は・・・
  • 生のレモン果実を後述する凍結乾燥機に投入できるように4つ切りに分割し、
  • −196℃の液体窒素を用いて凍結した。
  • これを凍結粉砕機に投入し、凍結したまま微粉砕することにより・・・白いさらさらした粉末状の凍結微粉砕物を得た。・・・
  • 次に、凍結微粉砕物を40%原料用アルコールに2日間浸漬した(100g/L)。
  • 得られた浸漬液を珪藻土を用いてろ過して固形分を除き、
  • アルコール40%のレモン凍結微粉砕浸漬酒を得た。

つまり、
①生のレモン果実を4つに切った
②凍らせた
③凍ったまま砕いて粉にした
④40度のアルコールに2日間漬けた
⑤フィルタでこしてレモンの実、皮などを除くことにより、
40度のレモン酒を得た。

という流れになっています。

実施例は、企業で実施する場合が多いので、大規模な設備や分析装置を使用することがよくあります。

そのため、難解なように見えますが、レシピと考えればわかりやすいと思います。

2020/02/28

前回の続きです。


比較しているのは、以下の2つの特許明細書。

 

(日本語の特許明細書)

特許第4892348号

発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」

 

 

 

(英語の特許明細書)ヨーロッパの特許です

EP1792974 B

Title of the Invention:「Alcohol-dipped material, food or drink using the same and method of producing the same」

 

 

前回は、発明の名称を比較しましたが、今回は、特許請求の範囲(クレームと呼ぶこともある)を比較してみます。


ちなみに、特許請求の範囲は、日本文と英文では少し内容が異なっている場合がよくあります。
そもそも各国で欲しい権利を取得するためのものなので、違って当たり前ですし、それぞれ少しずつ制度が違うのもあって、参考程度に比較してみると良いと思います。

請求項1を比べてみます。

(日本語)

【請求項1】

(a)原料果実および/または野菜の一種以上を凍結し;

(b)凍結物を平均粒径が1μm〜100μmとなるよう微粉砕し;

(c)微粉砕物をそのまままたは解凍してペースト状にしてから、15%〜100%のアルコールに浸漬して浸漬液を得て;そして

(d)浸漬液を添加する

工程を含む、食品または飲料の製造方法。

(英語)

 

A method of producing a food or drink, wherein the method comprises the following steps:

(a) freezing one or more fruit(s) and/or vegetable(s) employed as a raw material to provide frozen matter;

(b) microgrinding the frozen matter until an average grain size of the frozen matter is 1 µm to 200 µm to provide microground matter; and

(c) dipping the microground matter in an alcohol having a concentration at which one or more components of the raw material can be extracted to provide an alcohol-dipped material, wherein the microground matter is dipped in the alcohol as it is, or the microground matter is thawed to give a paste which is then dipped; wherein the alcohol having a concentration at which one or more components of the raw material can be extracted is a 15% to 100% alcohol;

(d) providing a food or drink from the alcohol-dipped material.

特許請求の範囲は、わけわからん!と言われることが多いのですが、全体として1つの名詞になっていると考えると理解できます。

「どういう権利が欲しいの?」と聞かれ、「○○というもの。」と答えていると考えるとイメージがしやすいのではないかと。

上の例では、日本語では「食品または飲料の製造方法」、英語では「A method of producing a food or drink」について権利が欲しいということであり、それ以外の部分は、「どんなものか」という詳細を示しており、この言葉にかかる修飾です。

日本語と英語で修飾部分の来る場所が逆(日本語では前、英語では後ろ)になっているのは、単純に言語の特性によるものです。

基本構造は、日本語バージョンも英語バージョンも「(a)工程と(b)工程と(c)工程と(d)工程を含む、製造方法。」となっており、4つの工程があるという点では違いはなさそうです。

英文の1行目にある表現をみてみます。

A method of producing a food or drink, wherein the method comprises the following steps:

whereinという言葉も、特許明細書では非常に良く出てくるのですが、あまりなじみはないかもしれません。

Cambridge Advanced Learner's Dictionary には、
wherein = in which, or in which part と書かれています。

whereinの後には、発明の内容 「食品または飲料の製造方法」を更に細かく説明する文章が続きます。

食品または飲料の製造方法なんだけどね、この方法はね、○○という特徴があってね、・・・(延々続く)

みたいな感じですね。

2020/02/27
サントリー ストロングゼロの英日明細書を比較してみます。
(日本語の特許明細書)
特許第4892348号
発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」

(英語の特許明細書)ヨーロッパの特許です
EP1792974 B
Title of the Invention:「Alcohol-dipped material, food or drink using the same and method of producing the same」
発明の名称同士で比較をしようと思ったのですが、よく考えると日本語の発明の名称も慣れていないとわかりにくいかもしれませんね。

「または」と「もしくは」の使い分けがされています。
この2つは、法律文書では明確に定義がされており、法律条文などでも明確に使い分けられています。

どちらも書かれている選択肢のどれか、という意味なのですが、「もしくは」の方を小さなブロック、「または」をそれより大きなブロックに対して使います。

ですので、上の発明の名称は、

アルコール浸漬物/またはそれを用いた食品もしくは飲料/およびその製造方法

となり、

  1.  アルコール浸漬物
  2.  それを用いた食品もしくは飲料
  3.  その製造方法
の3つが一緒に書かれたものになります。


「それを用いた」の「それ」と、「その製造方法」の「その」に、the same が使われています。

文章によっては、 thereof が使われることもよくあります。

慣れていないと少しとまどうかもしれませんね。

2020/02/26
いきなり英語のタイトルでスタートしましたコンニチハ。

私の場合、特許翻訳の勉強は、特許事務所でいきなり「訳せ」と言われたところから始まっておりまして。
OJTで怒られ怒鳴られつつ、かれこれもう19年この世界におります。

そもそも技術者(日本語の明細書を書く人です)として入って、結局翻訳の方がメインの仕事になるとは、当時は考えていませんでしたね。

最初のうちは仕事をこなすだけで精一杯だったのですが、そのうち自分でも学習するようになりました。

そのときに使っていたのが、日本語と英語の特許明細書(いわゆるパテントファミリーというやつですね)。

特許を取りたいと思ったら、取りたい国に書類を提出する必要があります。

もちろん、書類は、その国で指定されている言語で作成する必要があるので、内容が同じで(厳密に言うと少し違う場合もあります)、言語が異なる書類が複数発生することがあります。

そして、その書類は、基本的には公開されておりまして、誰でも無料でダウンロードすることができます。

日本語の特許明細書を読み、英語でどのように訳されているのかを見る。逆に、英語の特許明細書を読み、それが日本語にするとどういう表現になるかを見る。

そうやって、明細書の文章に少しずつ慣れていきました(癖があるので最初は読むだけでも抵抗があります)。



さて。タイトルは、ある英文明細書のタイトルなのですが、何の発明かわかりますでしょうか?


ほら、あれですよアレ!🍺


日英で表現を見比べてみようと思います。

2020/02/25
大阪工業大学で論文試験対策講座を担当するようになって、今年で3年目です。

学生さんの傾向として、
1.暗記は得意(頭が若いので)・・・短答試験(一次試験)は突破可能
2.文章を書き慣れていない・・・論文試験がうまくいかない

というのがあります。もちろん、人によって暗記の得意不得意、文章作成の得意不得意がありますが。

1年目は、とにかくたくさんの知識を覚えてもらおうと、あれもこれもと、かなり詰め込んで講義をしました。
しかしながら、あまりうまくいかず。。。2年目、3年目と伝えることを減らして、大事なことは何度も伝えるようにしています。

知識があれば文章は書ける、というものではないこともわかってきましたし。

3年目の今年は、

答えを出すまでに頭の中で考えたことを全て答案に入れる

これをしつこくしつこく伝えています。

言い換えると、

  • 読み手が読みやすいように筋道を立てて書く
  • 流れを省略しない
  • 答案を見ただけで問題を読み返さなくても内容がわかるように書く
  • 導入部分から結論までの流れが素直で、読みやすい
ごくあたりまえの「文章の書き方」ですね。特に目新しいことは言っていません。

ただ、実際に書くとするとなかなか大変です。

全部入れようと思ったら何を書けばいい?どんな順序で書けばいい?と書きながら悩んでもらい、それぞれに自分の文章スタイルを確立してもらうのがゴールです。

4月から1年間、書く練習をしっかりしてもらったので、今の時期になると、それなりに分量も書けるようになります。

私も負けずに文章を書く練習をしなければいけませんね。

2020/02/24
そもそも、大阪工業大学専門職大学院に社会人入学したことがきっかけでした。

大学院を修了すると、弁理士試験一次試験が一部免除になるというメリットもあり、弁理士試験を受けようかと10年ぶりくらいに決断し。
結局、一次試験免除制度は使わず、2015年に一次試験から一気に最終合格まで行きました。

その後、学生さん達に論文試験対策をということで始まったのが、

弁理士受験会アドバンスコース(論文試験対策が中心)

でした。一次試験に合格できそうなレベルの学生に、二次試験である論文試験の対策をと始まった講座です。

いきなり過去問を使って論文を書かせるというスパルタ形式で始まったのですが、文章を書き慣れていない学生さん向けに、

弁理士受験会ミドルコース

という講座もできました。

「試験に合格する」というのが最大の目標ではありますが、「書きたいことを十分に表現できるようにする」ことを裏目標としています。

私が特許事務所に入って明細書書きを始めたときも、書きたいことをうまく表現できないという悩みがずっとありました。
今でも文章が上手くなったとは言いがたいのですが、自分が悩んでいたことを思い出しつつ、それぞれの学生に合わせ、ほぼマンツーマン形式で指導をしています。


なんとか毎年最終合格者が出るようにはなってきたのですが、まだまだ足りない部分が多いと感じています。

大学のスケジュールに合わせているため、3月で一旦終了。また4月から新たな講座となります。

2020/02/23
「きき湯」の特許のまとめページです。
きき湯に関する簡単な説明はこちら

<きき湯に関する特許情報>

特許番号4014546号

特許権者 ツムラ ライフサイエンス株式会社

発明の名称 固形浴用剤組成物


特許請求の範囲は、以下のようになっています(見やすいように適宜改行を入れました)。

 

【請求項1】

 有機酸と炭酸塩を含有する固形浴用剤組成物であって、
有機酸としてリンゴ酸とフマル酸との混合物を用い、
かつ組成物全体のリンゴ酸の含有量が20〜40質量%、フマル酸の含有量が2〜10質量%、炭酸塩の含有量が20〜60質量%であり、
ブリケットであることを特徴とする固形浴用剤組成物。


ちなみに、請求項2は、

【請求項2】
 リンゴ酸とフマル酸の混合割合が、20:1ないし2:1である請求項第1項記載の固形浴用剤組成物。


つまり、リンゴ酸とフマル酸を一緒に用いることと、その比率をうまく調整することが重要なようです。リンゴ酸が多い方が良い効果が出るということのようですね。

特許明細書には、【背景技術】という項目があります。
ここを読めば、当時どんなことが問題になっていたのか、今回の発明がどんな問題を解決したのかわかるようになっています。

背景技術には、このようなことが書かれています。
従来より、有機酸と炭酸塩を配合した固形浴用剤組成物(以下、「固形浴用剤」という)は、炭酸ガスによる温浴効果、発泡による入浴の楽しみを提案できるものとして知られており、各種の製品が作られている。
従来技術の問題点

  1.  有機酸として「フマル酸」は従来から使われていたが、お風呂に入れると、溶け残りが発生しやすいという問題があった
  2.  「リンゴ酸」は、しっとりとした入浴感が得られるというメリットもあるが、成形性が良好ではないという問題があった
解決策

「フマル酸」と「リンゴ酸」を適切な割合で混ぜ合わせて使用することにより、上の問題点を解消することができた。

つまり、
【発明の効果】本発明の固形浴用剤は、成形性に優れ、しっとりとした使用感を有し、浴場表面状態も良好である。
となるわけです。

単独成分では、メリットもあるがデメリットが多かったという問題があって、複数の成分をうまく組み合わせることにより、デメリットをうまく解消し、メリットのみを残すという考え方ですね。

化学分野の特許では、特許請求の範囲に数値が記載されることがよくありますが、比率を変えると効果が変わってくることがよくある、というのが化学分野に非常に特徴的と言えます。

2020/02/22
身近な特許第2段は、「きき湯」。商品を手に取ったことがある人も多いと思います。

化学・バイオ系の明細書に限らずですが、「見たことがある商品」の特許明細書は、予備知識があるため読みやすくなります。

例えば、こんなページを参考にするとよいです。



特に、「開発者からひとこと」のページは、発明の特徴をわかりやすく説明してくれていることが多いので、目を通してから明細書を読むとポイントが掴みやすくなります。
このページには、以下のように発明の特徴が書かれています。
きき湯の特徴は、ブリケットという独特の形状と、湯に入れたとき踊るように発泡する溶け方です。いずれも当社としては初の試みで、開発時にはいろいろな苦労がありました。
入浴剤は、粉末のもの、液状のものなど様々な形がありますが、きき湯はそのどちらでもなく、ある程度の大きさをもった粒になっていますよね。どうもそこの部分に発明のポイントがあるようです。


<きき湯に関する特許情報>
特許番号4014546号
特許権者 ツムラ ライフサイエンス株式会社
発明の名称 固形浴用剤組成物


2020/02/21

専門分野とは


一応自粛モードで、立ち飲み屋さんで飲むお酒を1杯だけ減らしている坂上ですこんにちは。

弁理士試験に受かった後、色々な祝賀会&交流会に参加したときに聞かれた言葉。

「専門(技術分野のこと)は何?」

弁理士試験って、受験者も合格者も理系が8割文系が2割という感じなので、まぁ工学系のバックグラウンドがあるのが前提みたいになっておりまして。

技術的なバックグラウンドは非常に大事にされている気がします。

私で言うと「化学(もっと細かく言うなら有機合成化学)」なのですが。大学の専攻が有機化学だし、研究開発経験も材料系ではなく液物なので。

高分子などの材料系よりも、医薬系の薬効成分などの分野の方が専門に近いです。

特許翻訳でいうところの「化学・バイオ分野」は、もう少し(いやかなり?)広い気がしています。

特許で花形?の分野といえば、大きく分けて機械分野と電気分野があります。弁理士試験後の登録前研修も「機械分野、電気分野、化学分野」に分かれて学びます。

特許翻訳でいう化学(バイオ)分野のイメージ

あくまで私調べなのですが・・・

「これ化学(バイオ)だと思うんですけど、対応できます?」と依頼がある分野って・・・

化学(バイオ)分野=全体−(機械分野+電気分野)

なのではないかと。

元々化学分野は出願件数が少ないので、いきおい「なんでもやさん」になりがちではあります。

化学・バイオ分野とまとめられがちですが、本来はこの2つは全く違う技術分野ですし。というか、私が学生のときはまだバイオ分野といえるものが発達していなかった・・・

技術の発達という観点でみても、だんだん境界分野の研究が増えてきているので、「これどっちの専門の人に頼もうか?」と悩むことは増えている気がします。

例えば、「医薬品の分析装置」などだと、医薬品の分析に重点が置かれていれば化学系、装置のしくみに重点が置かれていれば機械系に偏りますが、どちらにしても両方の知識が必要になります。

そういう仕事を請けているうちに、色々な知識を広く浅く知る人になってきました。研究者のときとは真逆ですね。

2020/02/20
東京マラソンの一般参加中止が発表されてから、他の大会も次々と中止になっています。
この前、熊本マラソンを走ってきたところですが、次に大会に出るのは暖かくなってからになりそうですね。

そんなわけで、ちょっと暇になってしまったので、自分なりの対策を。

とはいえ、マスクも売っていないし、とにかく自分の免疫力を高めて乗り切るしかないかなと。
不要不急の外出を避けること、とのことですので、事務所にこもって仕事をすることに。

事務所の本棚を見ると、ある本がふと気になりまして。


ちょっと読んでみようかと。




なんでこんな本が手元にあるかと言いますと。

元研究者とはいえ、特許翻訳の仕事で扱う仕事の中には、勉強したことがない分野も多々含まれます。
大学が工学部なので、工学系の本は一度は見たことがあるものが大多数なのですが、医学系になるとなかなかわからないことが多いです。

それでも、だんだん分野間の境界にあたるような技術も増えてきているので、本を読みつつ知識をアップデートしております。
というわけで、事務所には積ん読している本(読んでないんかい)がたくさんありまして。

化学・バイオの本(医学・薬学系も含む)で、よく知らなくて新しく勉強してみようと考えたときに、自分なりに選ぶ基準を作っています。

基準1 写真や図がたくさん書いてあること

単純に、文章だけで書いてあるよりもわかりやすいからです。上の本も「カラー図解」となっていて、身体のイラストなどが数多く用いられています

基準2 一般向けではなく、専門の人が読む本の入門書であること

普通に知識を得るだけなら、一般向けの本の方がわかりやすいのですが、目的が「特許翻訳に必要な知識を得ること」なので、はじめから専門の人向けの入門書(学習者向けなどもOK)を選ぶようにしています。
上の免疫学の本は、「医療・医療関係者を目指す人 必読の1冊」となっています。

基準3 実験のやり方が具体的に書いてあるような本

実施例、実験例などを訳すときに、どのような手順なのか文章だけではわからないことがあります。
そのときに、実験の手引き書のようなものがあると便利です。


でも、積ん読しとくだけではだめです(当たり前)。

ちょっと読んでみようかと思いまーす。

2020/02/19
化学は、「例外が9割」と言われる学問でもあります。

私が大学に入学したとき、有機化学の分厚い教科書を手にしました。
そこには、たくさんの反応式が書いてあり、世の中で合成できないものはない(何でも作れる)んだなーという印象を受けました。

でも、実際に学習を進め、自分で実験をしていくうちに、

書いてある通りにやってもできないじゃん!

という事実にぶち当たったんですよね。

それは、「私の技術が足りない」ということもありますし、「個々の物質に合わせてちょっとした修正をしないと反応がうまく起こらない」ということでもありますし。

特に、何かと何かを反応させて新しい何かを作るという場合、やってみなわからんという側面もあります。

特許明細書では、書いてある発明をちゃんと実施できるように書く必要がありますが、こういう側面があるため、どうしても数多くの実施例(実験例)を記載しておく必要があります。

そのため、化学分野では、非常にページ数の多い明細書になってしまうことがあります(バイオ分野でも同じようなことが言えます)。

2020/02/18
化学・バイオ系特許明細書の翻訳業務を10年以上やっています。

たまに他の分野のお仕事もいただくのですが、化学・バイオ系の明細書は、ページ数がかなり多いものがあります。

500枚程度の超大作も見たことがあります。もちろん10枚〜20枚程度の通常レベルのものもたくさんありますが。

特許明細書は、以下のような項目に分けて記載されています。

1.技術分野
2.背景技術
3.先行技術文献の記載
4.発明の概要
5.図面の簡単な説明
6.発明を実施するための形態(実施例を含む)

化学・バイオ系特許明細書では、「6.発明を実施するための形態」のうち、実施例(実験例)のページ数が、他の分野と比べてかなり多くなりがちです。
そのため、全体のページ数も増えてしまいます。

では、実施例(実験例)をそれほどたくさん書かなければならない理由は何なのでしょうか。
次回に続きます。

2020/02/17
先日ご紹介した、サントリー「−196℃ストロングゼロ」の特許

簡単に内容をまとめてみます。

特許4892348号
発明の名称:アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法

特許請求の範囲もそれほど難しくないのでご紹介すると、

【請求項1】
(a)原料果実および/または野菜の一種以上を凍結し;
(b)凍結物を平均粒径が1μm〜100μmとなるよう微粉砕し;
(c)微粉砕物をそのまままたは解凍してペースト状にしてから、15%〜100%のアルコールに浸漬して浸漬液を得て;そして
(d)浸漬液を添加する
工程を含む、食品または飲料の製造方法。

ざっくり簡単にいうと、

ステップ1:漬け込むフルーツを凍らせ、
ステップ2:凍ったフルーツを細かく砕き、
ステップ3:砕いたものを凍ったまま、または解凍してから、漬け込み酒に漬け込み、
ステップ4:漬け込み酒を食品または飲料に加える

という工程で食品または飲料を作る方法、ですね。

知財入門講座などで講義をするときは、食品系などの特許は、レシピが書いてあると考えればわかりやすいですよとお伝えしています。
今回の特許は、果実酒などを漬けた経験がある人はわかりやすいのではないでしょうか。

例えば、梅酒を漬けるとき、通常は、青い梅をお酒に漬けます。
ただし、出来上がるのに半年以上かかるので、時間短縮したい場合には、梅をいったん冷凍庫で凍らせてから漬けるという手法があります。
この手法を使えば、梅のエキスが出やすくなり、短時間で梅酒を完成させることができます。

今回の発明は、「果実の香味をそのまま有し、従来以上に香味の良い(=つまり、生のフルーツそのままのような味と香りの)」お酒を作ること、にあります。

例えば、手作りの果実酒だと、梅やレモンなど生で食べるには少し酸っぱすぎるような果実は美味しく仕上がりますが、桃、ミカン、リンゴなど生で食べて美味しい果実で果実酒を作ると、なんとなく味がぼやけてしまったり、生の果実とは異なる(が美味しい)味の酒ができたりします。

私も梅酒作りを趣味にしているので、生のフルーツをかじったようなお酒を作るのはなかなか難しいなと個人的には思います。

興味があったら、元の明細書も読んでみて下さい。

2020/02/16
翻訳学校で明細書を学ぶ題材として集めていたもののリストです。化学以外も混じっています。
良ければ参考に(「特許翻訳のプロが教える翻訳を仕事にする99の方法」のページに置いてあります)。





2020/02/15
サントリー京都工場に見学に行ってきました。

おいしゅうございましたー!!それではー!!

・・・あぶないあぶない、終わるところでした。

翻訳学校や大学の知財入門講座では、特許明細書を題材として講義をするときに、身近なわかりやすい特許を題材にします。

例えば、お菓子やビール飲料など、商品を見たことがありそうなもの。

会社のHPなど、よく見れば特許番号が記載されていたりします。特許を取得している商品なんだというのは、間違いなくウリになりますので。

例えば、このページ。サントリーさんの−196℃ストロングゼロに関するページです。2012年なので少し前のものになりますが。


JPlatPat(特許情報プラットフォーム)のページにこの番号を入力するだけで、簡単に該当する明細書を検索することができます。

発明の名称は、「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」となっており、

果実のみずみずしくフレッシュな香りをそのままに、美味しいお酒を作る方法、ですね。
−196℃製法については、サントリーさんのページに詳しく書いてあります。

こういうページから予備情報を得ておくと、明細書を読んだときに内容が頭に入ってきやすいと思います。


2020/02/14
昨日の続きです。
昨日の記事:化学式(構造式)の書き方(1)はこちら

基本ルールは2つでした。

1. 直線(の折れ曲がり)で炭素(C)を表す
2. 水素(H)は省略

今日は応用編。
この書き方で色々な化合物を表すことができますよー、というご紹介。

例えば、二重結合がある化合物は・・・
単純に直線が二本になっています。
細かく書くと右のようにCとHをたくさん書かなければならない化合物が、左のようにシンプルになります。


次に、「亀の甲」でお馴染み、なぜか嫌われ者のベンゼン君。

ベンゼン環=炭素(C)が6個つながって輪になっている構造なのですが、左側に書いた3種類の書き方があります。どれも使われます。

高校かな?で習うのは、真ん中に書かれた二重結合(=)と単結合(−)が交互につながった形で、これを素直に基本ルール通りに書くと、左から1つめか2つめになります。

じゃあ、六角形の中に○が書かれているのは?
現在知られているベンゼン環の構造を表すには、こちらの方がより適していると考えられているからです。

ベンゼン環では、二重結合と単結合にきれいに分かれておらず、6個の炭素全体にふわっと繋がった形をしていることがわかっています。←かなり省略した書き方をしているので、詳細が知りたい場合は専門書を読んで下さい




2回にわたって化学式の話をしてきましたが、覚えてくださいー、ということが言いたいわけではありません。

どうもこの形というか、見た目がそもそもナンジャコレ感があるみたいで、翻訳学校で講師をしていたときも、あーこれ無理!!嫌だ!!と言われることがよくありまして。
そんなに嫌がらんといて下さい、って話です。

物に形があるように、化合物にも形があります(小さすぎて目に見えませんが)。ただその形を示しているだけなんですよ。

そうなんだふーん、と思ってもらえれば十分で、何か難しいものを示しているとか、そこから謎を解明しなければならないとか、そういうものではありません。

2020/02/13
さかのぼること199×年。私は大学1年生でございました。

理系科目の中で化学だけが好きで、物理と数学はいまいち苦手で・・・これで化学ばっかりやって過ごせるワーイ!!と思っていました。← 当たり前ですが物理と数学も講義内容にあります逃げられません

たしか1回目の授業で、先生が黒板にサラサラっと絵を描きました。

↑たしかこんなん

んんん?何何何???

先生は続けます。

「これはな、端っこと折れ曲がったところに炭素(C)があるんよ」

○のところに炭素(C)があるので、下の図のように炭素が並んでいる状態

「そして、炭素の手は4本だから、残ったところには水素(H)を入れる」

↑こうなる

つまり、C10H22(デカン decane)を表す、というわけです。

まぁ、いちいちCだのHだの書いていられないので、こういう書き方があるわけですね。

CとH以外は、「O」「N」など個別の元素記号が書かれています。

基本的には、どんな複雑な化合物でも同じです。

↑前回出てきたこれも、角のとこには炭素(C)があります

2020/02/12
特許翻訳で独立し、会社を辞めてフリーランスになったのは2008年でした。

当時は今よりも盛んに交流会やセミナーに参加していたと記憶しています。

まぁ、もともと飲むのが好きな私のこと。お酒付きの交流会なら喜んで!という感じだったりします。

その頃から色々な人に言われたこと。

「化学は難しい!」

化学大好きっ子で大学も応用化学科に進んだ私、他の工学系科目の方が難しいと思っています。数学とか物理とか苦手だしね。

で、どのへんが難しいんですかね?などと聞いてみると。

とにかく亀の甲がアカン、とのこと。

亀の甲ってのは、まぁベンゼン環のことだと思うんですが、ここでは化学式とかが出てくる文章がアカン、ということなんでしょうね。

↑こんな感じですかね

そういえば、大学に入って最初の授業で、この書き方を習った気がします。高校の化学では無かったかも。

  • 化学分野のこんな案件、ココだけ手伝って欲しい・・・
  • ちょっとややこしい翻訳の案件があるんだけど・・・
  • こんな仕事依頼したらどれくらいでやってもらえるの?

これくらいの確度でも、ご遠慮なくご相談ください。

まずは、お話からはじめましょう。

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