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  1. 化学・バイオの特許「あるある」ブログ
 

化学・バイオの特許「あるある」ブログ

2020/03/09

 

<参考特許>ヘルシア特許

  特許番号 3329799号

  特許権者 花王株式会社

  発明の名称 「容器詰飲料」
前回書いたとおり、この特許は、「カテキン類を高濃度に含有する容器詰飲料」に関するものです。

従来技術の記載から

カテキン類がさまざまな有益な効果を有することは、かなり前から知られています。

従来技術の記載には、引用文献の1つとして「特開昭60−156614号」が挙げられています。

この文献では、「コレステロールの上昇を抑える」効果を有すると書かれています。

これが出願されたのが昭和59年ですから、ずいぶん前から茶カテキンに優れた効果があることは知られていたんですね。

カテキン類とは?

カテキン類は、ポリフェノールの一種とされています。

ちなみに、「ポリフェノール」の「ポリ(poly)」とは、「たくさんの」という意味です。

つまり、「ポリフェノール」は、「たくさんのフェノール」=「フェノール(ベンゼン環にOHが付いたもの)がたくさん」=「ベンゼン環にOHがたくさん付いた化合物」という意味になります。

カテキンの詳細については、以下のページが参考になると思います。

カテキンのいろは 日本カテキン学会
エピカテキン、エピカテキンガレートなどのカテキン類の名称と構造式が記載されているので、興味のある方はどうぞ。

効果・作用のページ 同じく日本カテキン学会

2020/03/08
緑茶つながりで、もう一つ別の特許を。
特許番号 3329799号
特許権者 花王株式会社
発明の名称 「容器詰飲料」

「ヘ」から始まる例の飲料でございます。

昔スポーツジムに通っていたときに、筋肉隆々の男性同士で

「身体作りに何が一番効いた?」←たぶん筋トレの種類を想定して聞いてる

「うん。ヘルシアが良かったね」

という会話をしていて、私も一緒に爆笑してしまったのですが、結構効果があるんでしょうかね。


発明のポイント

  • 製法ではなく、「飲料」の特許である
  • 特許請求の範囲に、パラメータが記載されている(「パラメータ特許」などと言われることもある)
  • ヘルシアの基本特許


商品紹介ページ

「体脂肪が気になる方に」「内臓脂肪を減らす」などの効果がうたわれています。

緑茶だけではなく、コーヒー、紅茶などの商品もあるようです。

高濃度「茶カテキン」が含まれることが特徴です。


技術分野

発明の詳細な説明には、以下のように書かれています。
本発明はカテキン類を高濃度に含有する容器詰飲料に関する。


2020/03/07

英語明細書と日本語明細書の比較

<日本語明細書>

特許番号4015631号

発明の名称「容器詰緑茶飲料の製造方法」

特許権者 株式会社伊藤園
<英語明細書:ファミリーパテント>
US7682643
Method for manufacturing containered green tea beverage

 

日本語明細書の特許請求の範囲は、以下のとおりでした。

工程①〜⑤からなり、工程②について、②’に詳細が記載されている構造となっています。

【請求項1】

① 緑茶葉を70〜100℃の加温水にて抽出する抽出工程、

② 得られた茶抽出液にシリカを添加して茶抽出液中のオリ成分を当該シリカに吸着させる吸着工程、

③ 酸処理された珪藻土を用いて珪藻土濾過を行う珪藻土濾過工程、

④ 殺菌工程及び

⑤ 容器充填工程

を含む容器詰緑茶飲料の製造方法であって、

②’ 吸着工程では、シリカを添加する茶抽出液を20〜40℃に冷却することを特徴とする容器詰緑茶飲料の製造方法。

 

これに対し、US7682643のクレーム1は、次のとおりです。
こちらも5工程からなる製造方法のクレームです。

上の①〜⑤に対応する番号を付けてみると・・・ 

1. A method for manufacturing containered green tea beverage

having catechin content, wherein said method comprises:

① an extraction step wherein green tea leaves are extracted in hot water at 70-100° C., said extraction step resulting in a green tea extract;

② an adsorption step wherein after adding silica to the tea extract, said tea extract is brought into contact with silica while being cooled so as to reach 20-40° C. to absorb formulation components of a secondary sediment present in the green tea extract to said silica;

○ a silica elimination step wherein the silica is eliminated from the green tea extract;

④ a sterilization step; and

⑤ a container filling step.
工程③にあたる「珪藻土濾過工程」が、単純に、②で使用したシリカを茶抽出液から除去する工程となっています。

「オリ」に関する表現 

「オリ」=sediment

「二次的なオリ」=secondary sediment

飲料製造後の保存中に経時的に発生する「二次的なオリ」
“secondary sediment,” which occurs gradually with time after manufacturing the beverage, during storage.

2020/03/06
昨日に引き続き、「おーいお茶 ナチュラルクリア製法2010」の特許請求の範囲から。

前回は、以下の疑問で終わっていました。
では、オリ発生防止ということであれば、吸着可能なものは全て吸着させ、濾過可能なものは全て濾過してしまえばよいのでは?という疑問もわきます。
この疑問に対し、この特許明細書の本文に答が示されています。

【0006】
 しかし、オリの原因物質を除去することにより二次的なオリの防止を図る方法は、緑茶飲料中に含まれる混濁・沈殿の原因物質を最終的に全て排除するものであったため、
茶の香味に影響しオリの形成に寄与しない成分も多量に除去することになり、茶が本来備えている香味が弱くなるという課題を抱えていた。

これを読んでいて、ふと思い出したのは、こちらの商品。別の会社のものですが。

つまり、お茶というのは、濁りすぎても商品価値が失われ、濁りを取り過ぎても商品価値が失われ・・・という絶妙なバランスが必要なもののようです。


2020/03/05

おーいお茶 ナチュラルクリア製法2010の特許について、内容を紹介しています。

 

<公報情報>

特許番号4015631号

発明の名称「容器詰緑茶飲料の製造方法」

特許権者 株式会社伊藤園
商品紹介&背景技術の紹介はこちらの記事を。

今回は、特許請求の範囲です。
わかりやすいように適宜改行を加えました。
【請求項1】
緑茶葉を70〜100℃の加温水にて抽出する抽出工程、
得られた茶抽出液にシリカを添加して茶抽出液中のオリ成分を当該シリカに吸着させる吸着工程、
酸処理された珪藻土を用いて珪藻土濾過を行う珪藻土濾過工程、
殺菌工程及び
容器充填工程
を含む容器詰緑茶飲料の製造方法であって、
吸着工程では、シリカを添加する茶抽出液を20〜40℃に冷却することを特徴とする容器詰緑茶飲料の製造方法。

①お茶を入れる
②お茶にシリカを加え、オリ成分をシリカに吸着させる
③珪藻土で濾過する
④殺菌する
⑤容器に詰める

という5工程からなる製造方法ですが、
①でお茶を入れた後に(当然まだ熱いまま)、一旦20〜40℃まで冷やした後に②のシリカ吸着を行う点が特徴です。

ここで、この発明の目的を振り返ると、

 

「長期保存してもオリを発生しない」「加温販売に適した」容器詰緑茶飲料を製造すること

でした。

オリ発生防止に効果があると思われる工程は、上の②の吸着工程と③の濾過工程です。

その他の工程は、お茶入りペットボトルを製造する通常の方法と思われます。①の工程で「70〜100℃」となっているのは、美味しいお茶を入れるのに適した温度ということでしょうね。

では、オリ発生防止ということであれば、吸着可能なものは全て吸着させ、濾過可能なものは全て濾過してしまえばよいのでは?という疑問もわきます。

2020/03/04
このブログで紹介している特許明細書をpdf形式で入手する方法を紹介します。

特許番号4015631号

発明の名称「容器詰緑茶飲料の製造方法」

特許権者 株式会社伊藤園
例として、これを入手してみましょう。

工業所有権情報・研修館の「J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)」というページからダウンロードできます。

① 「特許・実用新案」をクリックし、「特許・実用新案番号紹介/OPD」を選択します。


② 一番下の「特許番号(B)...」の右の枠に、特許番号(今回は4015631)を入れ、照会を押します。



③ 検索結果が出てくるので、「特許4015631」をクリックします。

④ 「文献単位PDF」をクリックし、後は指示にしたがって進めば、文献のPDFファイルを入手することができます。


2020/03/03
このブログでは、化学・バイオ分野の特許明細書から、できるだけ身近に感じられるような題材を選び、内容を簡単に説明しています。

特許明細書を読むコツ

特許明細書の中でも、最初の数ページは比較的読みやすくなっています。

 

最初の数ページには、


1.技術分野・・・どんな分野に関する発明ですか(見出しのようなもの)

2.背景技術・・・その発明が生まれた背景。つまり、「どんな問題・需要がありましたか?」などが書かれている


が書かれています。

後ろのページに行くにつれて、詳細な技術の話に変わっていくため、前知識が必要な場合も出てきます。

しかし、この2つの項目については、導入部分ということもあり、技術内容が平易な言葉で書かれているため、前知識がなくても読んで理解することが可能です。

お茶の製法特許

次は、サントリーの製法特許に続き、別の製法特許を選びました。

今回挙げるのは、伊藤園のおーいお茶。ナチュラルクリア製法2010と呼ばれる製法の特許です。
特許番号4015631号
発明の名称「容器詰緑茶飲料の製造方法」
特許権者 株式会社伊藤園

商品紹介ページ

技術分野

  • 長期保存してもオリを発生しない容器詰緑茶飲料の製造方法
  • 加温販売に適した容器詰緑茶飲料の製造方法

どんな問題があったか(概要)

特許明細書から要点だけをまとめてみます。

例えば、急須でお茶を入れると、完全に透明なお茶にはならず、細かな葉の断片がお茶に含まれてしまったり、少し濁ってしまったりします(「オリ」と呼ばれています)。
もちろん、完全に透明ではなくても、味に問題はありません。

しかし、特にペットボトルとして販売する場合、中身が丸見えになってしまいます。「透明でクリアなお茶」の方が見た目がよく、商品価値も高くなります。

つまり、いかにして「オリ」が少ない透明なお茶を作るかが問題となります。

ちなみに、この特許で取り組んでいる「オリ」とは、「二次的なオリ」と呼ばれているもので、お茶を入れたときに発生するオリではなく、保存しているときに徐々に発生してくる濁りなどのことを言っています。

お茶を入れたときに発生するオリであれば、製造時にフィルターなどでろ過しておけばよいのですが、二次的なオリの場合、さらに別の処理が必要になってきます。

特に、冬場に売られるホット緑茶の場合、二次的なオリの発生が多くなることがわかっているため、この特許では、特に「加温販売に適した」オリ発生防止方法に着目しています。

2020/03/02
サントリーストロングゼロの記事は、今回で最後です。

参考にした特許明細書は、以下のとおり。

 

(サントリーストロングゼロ 特許情報)

特許第4892348号

発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」
EP1792974B1
「Alcohol-dipped material, food or drink using the same and method of producing the same」

今回は、個人的に気になった表現「チューハイ」についてです。

図1Aは、市販のチューハイAについてのHPLCのチャートである。

Figure 1A shows the HPLC chart of a marketed chuhai A.
「チューハイ」は日本のものなので、英語に訳すのはなかなか難しいですね。原文にない説明を追加するのも難しいですし・・・

チューハイは、cocktail of Japanese spiritsなどと表現する場合もあるようです。

こういうのって、どう表現するのが正解なのかなぁ。いつも悩みながら訳文を作っているわけですが、いまだに正解がよくわかりません。


2020/03/01

前回の続きです。

 

今回も、サントリーストロングゼロの特許明細書を参考にしています。

 

(サントリーストロングゼロ 特許情報)

特許第4892348号

発明の名称:「アルコール浸漬物またはそれを用いた食品もしくは飲料およびその製造方法」

実施例では、「発明品を実際につくることができますよ」ということを示すために、実験手順が書かれています。

実際につくるだけではなく、実際に思ったとおりの(効果のある)発明品ができましたよ、というのを示す必要もあります。

そのために、どのような装置・方法で評価するか、実際に評価してみたらどうなったか、なども実施例で示されます。

評価方法の1つとして、「官能検査」があります。

もちろん、評価としては、きちんとした数値の形でデータとして出る方がよいのですが、今回のように飲食物などでは、食べた(飲んだ)ときに消費者がどう感じるかが重要な場合があります。

官能検査というのは、人が自身の感覚に従って評価をするもので、いくつかの評価項目について、例えば5段階評価で何?というように数値化をします。

人によって評価が異なるのは普通なので、通常は複数人に検査をお願いし、平均点を計算して評価結果とします。

この特許明細書では、作成したお酒を、(1)そのままで、または(2)50℃で数日間おいた後に飲んでもらい、商品価値の悪化がないか(つまり、まずくなっていないか)を5段階で評価しています。

人間の感覚は、時に装置よりも正確に些細な違いを見分けることができるため、官能検査による評価結果も実施例によく記載されています。
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これくらいの確度でも、ご遠慮なくご相談ください。

まずは、お話からはじめましょう。

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